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ビデオ感想文
(最終更新日 2002.1.30)


溜りに溜まったビデオが部屋を占領してどうにもこうにもしょうがない,というわけで,感想を書いていくことにしました。

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コンチェルト
(2002.1.30)

俳優のダドリー・ムーアがホストを務めるシリーズ。アーティストへのインタビュー(主に曲について)とティルソン=トマス指揮ロンドン響との全曲演奏という構成です。50分×6。

1はモーツァルトのフルートとハープ。ゴールウェイとロブレスの話は面白いけど,この曲はやっぱりどうも。2はラローチャでベートーヴェンの1番。これも話は面白かったなあ。曲も好きだけど,演奏は,一部で神格化されてるほどの人気に値するかどうかは不明。悪くはないですけどね。3はイッサーリスのチェロででサン=サーンスの1番。これは演奏はいいんだと思うけど,曲そのものはどうしても好きになれない。

4のラフマニノフの2番は,いかにも体育系好青年のバリー・ダグラスがいかにも楽しそうに弾き飛ばしてます。この人最近どこ行ったのかな。5はストルツマンのコープランド。曲が短いだけに話が多いんですが,さすが元タッシ,なんやかやと哲学的なことも交えてなかなか面白いです。6は竹澤恭子のバルトーク。曲が長いためか竹澤との話はほんの少し。「どうしてもバルトークは好きになれない」というダドリー・ムーアにティルソン=トマスが説教する感じ。でも演奏は緊迫感があって良いです。

ダドリー・ムーアはさすが音楽を専攻しただけあって,ピアノもかなりうまいし,インタビューもツボを心得てます。ソリストや指揮者が楽器を弾きながら,かなり突っ込んだところまでしゃべってくれるのは貴重。演奏の場面は照明に凝ったりしてかなり演出されたもの。うるさいほどじゃないけど好みの分かれるところでしょう。私はストルツマンのコープランドが一番面白かったかな。




ドビュッシー:前奏曲集第1,2巻
セシル・ウーセ(ピアノ) (2002.1.30)

1988年,グラスゴーのバレル・コレクションという美術館でライブ収録。一曲ごとに収蔵品らしい絵がちょっと映って,その後ウーセの演奏風景という演出なんですが,これが控えめでなかなか趣味のいいものでした。各曲がはじまって,最初には tres lent とか何とか表情記号だけを画面に出して,その後数秒たってから英語で標題を出すというのも,わかってるねえという感じ。

演奏ですが,ウーセはとてもタッチがやわらかく,指も軽快に回り,我々の思うドビュッシーのイメージにぴったりはまる演奏。っところが贅沢なもんで,ここまではまるとちょっとこの枠を出た破調を求めたくなります。




ナクソス島のアリアドネ
バトル,ノーマン,キング,トロヤノス,アップショウ,レヴァイン指揮 (2001.11.15)

これまた豪華キャスト(エコーがアップショウでナヤーデがボニーだもんな)豪華装置のアリアドネ。結論からいうと,バトルVSノーマンの競演を楽しむ映像ですね。バトルは可愛いし,ノーマンはド迫力。二人とも最近どうしてるんでしょう。引退するにはまだ早いように思うんですが。

わりと若く亡くなったトロヤノスの作曲家も貴重。キングは全盛期過ぎてますがまあ貫禄。演出はオーソドックスで,とりたててなるほどと膝を打つようなアイディアもないけど,勘違いすぎていらいらするということもないです。他の人もさすがメトで,それぞれ実力ある人を集めてる感じですが,ただ,いかにも自意識の強いスターを集めて短期間でまとめましたという雰囲気がしなくもないです。みんな個人プレー。オペラでの女声3人のアンサンブルとか,もう少しきれいに響かないものかなあ。舞台裏の「契約」だの「競争」だのが見え隠れするような気がする上演・・・とまで言うと先入観強すぎるか。ということで上の結論になります。




リヒテル−エニグマ−
(2001.11.15)

ブルーノ・モンサンジョンのフィルム。最晩年のリヒテルのインタビューに,過去のいろいろな演奏の映像を交えて構成。

モンサンジョンのグールドの映画はあまり好きじゃないですが,これは良かったです。もちろん演奏場面も非常に貴重なんですが,やはりインタビューでしょう。

インタビュー,リヒテルは最後に日本へ来たときと比べてもだいぶ衰えてるんですが,冗談も交えながら結構あれこれしゃべってます。若いころの重い話から,名人の芸談みたいな話まで,淡々とした語り口で飽きさせません。

ずっと見ていて感じるのは,リヒテルが,非常に健全な精神を持った,普通の市井の人であることです。ピアノの巨人とか芸術家とか天才とかいう言葉のもつ異常さとは無縁の健全さ。挿入される過去のフィルムも,演奏場面以外は,笑顔でインタビューに答えていたり,パーティでおどけていたり,ちょっと我々のイメージとは違います。

最後に「自分のすべてが気に入らない」と言ってるので,非常にペシミスティックに受け取る人もいるようですが,私はそうでもないように思うのです。

150分




トスカ
ドミンゴ,ベーレンス,マクニール,ターヨ,シノーポリ指揮 (2001.11.15)

豪華な装置に豪華メンバーのトスカ。ターヨの七十何歳でかのメト初登場も話題になりました。

まずシノーポリの指揮がいい。これだけ緊迫感があって劇的な指揮はまあないんじゃないでしょうか。細部の強調は分析の結果か単なる思い付きかわかりませんが,この曲に関しては面白い効果をあげていると思います。

キャストではドミンゴですね。カッコいいし,演技もうまいし,歌もいい。ベーレンスは,歌はまあまあですが,どうもあの顔が・・・。もっとすごいお婆さんでも絶世の美女と思い込めちゃう歌手もいるんですけど,やはり違和感が。演技は評価が高いですが,地声を乱発しすぎだし,第2幕のスカルピアを殺したあとはもっと見下すような堂々とした雰囲気であってほしいです。マクニールはいかにもな悪役顔はいいんですが,歌は平板。

ということで,私としてはこれはシノーポリとドミンゴを聴くべき「トスカ」ということで。




ムツェンスクのマクベス夫人 ロストロポーヴィチ指揮
(2001.8.31)

例の録音に映画をつけたもの。輸入のDVDです。だいたいチェコの俳優さんが出てます。

えーと,出来は悪くないと思います。変な演技してる人もないし,俳優もそれなりに適材適所だし(でもみんな華がないなあ・・・),ときどきすごく綺麗な画面もあるし,演奏は定評のあるところ。

ただ,編集に一定の傾向がありまして,喜劇的なところや風刺的なところがかなりカットされてます。警察署の場面,ぼろを着た酔っ払いの歌その他。おかげでオペラよりずいぶん変化の乏しいドラマになっているような気がします。好みでしょうけど。




バッハ:ブランデンブルク協奏曲全曲 アーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
(2001.8.31)

10年以上前にNHK教育で放送されたもの。懐かしいサイマルキャスト(覚えてる?)。若々しい礒山先生が解説してます。

ドイツの放送局の制作で,なんだか昔の豪華な御屋敷の広間みたいなところで撮影。演奏は20年近く前にしては思ったほど悪くないなという印象です。ピリオド楽器と合唱は昔より今の方が良いと思うんですが,なかなか健闘してます。第2番なんかはやっぱりきつい部分もあるんですが,まあ今だって苦労してるわけですし。

曲によってはアーノンクールがチェロを弾いたり,第4番の第2楽章ではリコーダーをバルコニーみたいなところに上げたり,いろいろ見てても面白いんですが,ただどうしても思ってしまうのは「アーノンクールの目が怖い」ですね・・・。こればかりはどうしようもない。




シューマン:交響曲第2番,マンフレッド序曲,交響曲第1番 バーンスタイン指揮ウィーンフィル
(2001.8.31)

昔BSで放送されたもの。バーンスタインのシューマンの2番はCDの方も好きな演奏なんですが,これもいい演奏ですね。フィナーレの溌剌とした生命感なんかはこちらの方が上かも。でもそれ以上に第1番はすごい。特に第1楽章。煽る中にも締めるところは締める。カッコいい。

ここからはちょっと漠然とした話。バーンスタインの70年代の一連のシリーズを含むこの手の映像,フィルムによる撮影だからピントは甘いんですが(モニタで見たときの話ですよ。映画館で見たら違うでしょう。),ホールはきれいだし,オケもVPOなら知った顔もいるし,バーンスタインの指揮も表情豊かだし,悪いはずはない。

まあでもどっちかというと音だけの方がいい。なんででしょうね。コンサートに行ったときは全然そんなこと感じないのに。たぶんカメラの視点がひっきりなしに切り替わるのがいらいらするんだと思います。コンサートでは楽器にせよ指揮者にせよもっと長い間見てますからね。




『カルメン』ユーイング,ハイティンク/グラインドボーン歌劇場

ビゼー:カルメン
マリア・ユーイング(カルメン)
バリー・マコーリー(ホセ)
デイヴィッド・ホロウェイ(エスカミーリョ)
マリー・マクローリン(ミカエラ)他
ピーター・ホール演出
ハイティンク指揮ロンドン・フィル(リーダー:デイヴィッド・ノーラン)
The Compleat Operagoer #46 (2本組,175分)

グラインドボーンで観客を入れずに収録用に上演したもののようです。

とにかくユーイングのカルメンが凄いですね。あのワイセツな顔,体当たりの演技,下品な歌,好き嫌いは別として一度観たら忘れられないカルメン。他は,大スターはいないけどそれなりに好演。特にミカエラはかわいいです。見た目で違和感のある人がいないのがいいですね。エスカミーリョがちょっとおとなしいのが難かな。

ピーター・ホールの演出,装置も演技も手を抜かずすばらしい。若い力のある歌手を集めて練り上げていくグラインドボーンのよさが出てます。芝居としての完成度では抜群じゃないでしょうか。ウィーンでのクライバーのなんか目じゃないって感じ。

ハイティンク指揮のオーケストラは目のつんだ音で良いですが,前奏曲あたりはもうちょっとはじけてほしいところです。(2000.11.5)




1989年プロムス・ラストナイト

プリッチャードがただ一度指揮したラストナイト。イダ・ヘンデルがサン=サーンスの3番を弾いてるんですね。演奏はさすがですが,あの雰囲気にはちょっとミスマッチ。あと,サラ・ウォーカーが『サムソンとデリラ』のアリア(英語)とルール・ブリタニア。こちらもなかなか好調。

いかにも生真面目なプリッチャードはあまり気の利いたことも言ってませんが,音楽は品があっていいですね。『カルメン』組曲とかディーリアスの「河の上の夏の夜」なんて,おっとりした名演。モンティパイソンでもお馴染み,司会のリチャード・ベイカー氏が「プリッチャードは彼の first last night を楽しんでいる」といってるのを「最初で最後の夜」と訳してしまうのはいかがなものでしょう。実際そうなっちゃったわけではあるんですが。(2000.9.22)





バーンスタイン/VPOのマーラー6

若さと勢いのNYP時代と,異様に遅いテンポと粘りの最晩年の間で,1970年代のバーンスタインというのは少し中途半端な印象もありますが,結構名盤は多いので,一度位置づけ直しをやってみたいところです。これはヒゲを生やしたバーンスタインの見られる珍しい映像。

映像でマーラー(というか,オーケストラ音楽)を見ることのメリット,デメリット両方を感じました。メリットは,珍しい楽器や奏法(竹ぼうきみたいなのでなんかの板を叩いたり,4楽章の最初の方でハープの下の方を弾いたり,もちろんハンマーも)を見られること,デメリットは,視点が次々変わってうっとうしいのと,遠くから聞こえる効果を狙ったはずのカウベルが大写しになってしまったりする無神経な演出が興ざめなこと。オペラでもそうですけど,気にいらん演出なら映像なしで音だけの方がいいですね。

演奏は定評あるところで悪かろうはずもないです。ハンマー3発叩いてるのが珍しいですね。(2000.8.22)



クライバー指揮の『カルメン』(約140分)

ウィーン国立歌劇場で,オブラスツォヴァ,ドミンゴ,マズロク,ブキャナンという配役。演出ゼッフィレッリ。たぶん1979年かな。教育TVの録画。

若々しいクライバーの指揮はいい,と思うけど,音が悪くて(モノラルだし)よくわからん。セルビデオの方見直そう。歌手はまあオブラスツォヴァのカルメンが,声と風貌に違和感少なからずですが,無理矢理慣れればどうってことない。但しなんでミカエラを捨ててカルメンに走るのかは共感できませんねえ。

ゼッフィレッリの演出,瞬間瞬間は絵としてきれいだけど,群衆処理なんかも均一的であまり頭いい演出とは思えないです。タバコ工場の暴動だって,あんなに一気にはじまって一気に終わるもんですかね。ドミンゴの演技はさすがに上手いです。情けない男を演じさせたら天下一品。あまりリアルすぎて見てられないぐらい。(2000.8.9)



ベルリン・フィルのジルベスターコンサート(約60分)

カラヤン指揮で『魔弾の射手序曲』『道化師間奏曲』『マノンレスコー間奏曲』『ハンガリー狂詩曲第5番』『天体の音楽』『ボレロ』。1985.12.31収録で,そのしばらく後に放送されたものでしょう。当然まだカラヤンの存命中に録画したものですが,はじめて観ました(^^;)。例の半モタレの椅子で指揮してます。目も開けたままですね。

曲目のせいもあるでしょうし,晩年ってこともあるでしょうけど,アンサンブルの精度は意外とアバウトです(特に『魔弾の射手』)。でもこの気楽に振ってる感じが良いです。やっぱりこういう曲目はカラヤン,いいですね。特に『マノン・レスコー』間奏曲と『天体の音楽』は絶美。実はカラヤンのウィンナ・ワルツは好きなのでした。特に『天体の音楽』は数あるウィンナ・ワルツの中でも最も美しい曲だと思っているので,これは結構感動しましたね。(2000.8.9)




ファンタジア2000

今や「著作権ビジネスの我利我利亡者」「ネズミの皮をかぶった訴訟マニア」というイメージしかない(私だけか)ディズニーですが,5月7日で終わるっていうんで,大阪・天保山のアイマックスシアターまでファンタジア2000見に行って来ました。映画館で漫画映画見るなんぞ25年振りぐらい。私の行った5日は,休日とあって満員でしたけど,早く並んだおかげで最後列の通路沿いの席でゆっくり見られました。泣いてる子供はいたけどそれはしょうがないか。

◆ベートーヴェン:運命〜第一楽章

抽象的な「絶対アニメ」を作ろうとしてるのはわかるんだけど,なんか発想が古臭いですね。ちょうちょ二匹ってあんた。1960年代にありそう。編曲は展開部をスキップ。演奏も盛大に鳴る割にいまいち。

◆レスピーギ:ローマの松

空飛ぶクジラ。この曲から海をイメージするというのは面白いです。よく合ってました。「運命」と違って演奏もいいです。クジラの大編隊が飛んで行く最後の場面はイラクでも空爆に行くかという迫力(あれ絶対アメリカ空軍万歳のイメージだよな)。但しまあ個人的趣味としては,こういうクジラ好きイルカ好きっていうのはどうも胡散臭く感じますね。絵もラッセンみたいだし。クジラを人間が勝手にヒーリングとやらに利用するという2000年の流行りの記録としては面白いか。「カタコンブ」はカット。

◆ガーシュウィン:ラプソディー・イン・ブルー

何とか言う有名なイラストレイターの線描はいかにもアメリカっぽいタッチ。趣味じゃないけど。絵の中に出てくる 'Jobs Scarce' とか 'Subway' とか 'Talent Nite' とかの文字,一切解説なかったけど,あの込み入った筋,子供が見ても面白いのかな。

◆ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第2番〜第1楽章

アンデルセンの「錫の兵隊」。これは前評判通り,この映像のために書かれたんじゃないかというぐらいぴったり。そういやエイゼンシュタインの「10月」という映画にショスタコーヴィチのいろんな音楽をあとから付け加えたというのを見たことあるんですが,「誰とでも握手をするケレンスキー首相」を皮肉っぽく描いた場面にチェロ協奏曲第2番がぴったり合ってたなあ。

◆サン=サーンス:動物の謝肉祭〜フィナーレ

フラミンゴ。他愛ない映像ですけど,昔のスラップスティックなアメリカのアニメの味があって懐かしかったです。

◆デュカス:魔法使いの弟子

作り直したのかと思ってたら,そのままなんですね。でもこのわかりやすさはなんなんでしょう。やっぱりよく出来てるわ。中間の星を指揮する場面なんかやっぱりすごいですね。

◆エルガー:威風堂々

ドナルドダックの「ノアの箱船」。ストーリーは非クリスチャンの私にはあんまり面白くなかったですが,鑑賞のポイントは威風堂々第1〜4番をつぎはぎしたのがかのピーター・シッケレ教授だということでしょうか。

◆ストラヴィンスキー:火の鳥

研ナオコみたいな妖精とでかい鹿と火山。映像は一番手がかかっていてさすがにきれいです。ストーリーはいかにも今風にポリティカリーコレクト。


全体の感想としては,特にびっくりするようなのもなかったけど(期待してたんですけどねえ)それなりに面白かったかなというところ。2000円の値打ちはあったかな。でも一番面白かったのは「魔法使いの弟子」だったかも。

アイマックスシアター,スクリーンが大きいのはいいとして,音がいまいち。家ではあんな大きい音で聴けないからそれは貴重な体験だったんですが,ちょっとザラついた感じだし,微妙に焦点が合ってないし,音だけなら少々下手でもやっぱり生の方がいいなという感想。

それにしても,それぞれのアニメの前に,アメリカのゴツいおっさんおばはん(スティーブ・マーティンとかベット・ミドラーとか)が出てきて,アメリカでしか通用しないジョークをまじえつつ吹き替えで喋るのは閉口。そら子供も泣くわ。日本でこういう映画作ったとして,間に黒柳徹子や武田鉄矢が出てきたらブーイングものでしょう。





音楽の懸け橋〜パヴァロッティ中国公演(45分)

パヴァロッティが1987年に中国を訪問したときにイギリスのプロダクションが制作したドキュメンタリー。NHKで放送されたのは1989年初頭のようです。後に入ってたニュースの一部で大喪の礼とか言ってたし。ちなみに1ドルは127円ぐらい。

内容は,コンサート(リサイタルと「ラ・ボエーム」)の様子,くつろぐパヴァロッティ,中国の街の風景を交互に見せるというオーソドックス,というかベタなドキュメンタリー ですね。パヴァロッティの歌は「衣裳をつけろ」「オーソレミオ」「帰れソレントへ」ほかリハーサルでの何曲かを含めて結構ありますが,彼の歌を聴くなら他のソフトの方がいいでしょう。確かこのときの公演,指揮はアドラーで,「ボエーム」にはフィアンマ・イッツォ・ダミーコ(どこ行った?)とか出てたはずなんですが,キャスト全然クレジットされてなかったのが残念。

舞台の外の部分では,京劇のマネをするパヴァロッティ,自転車で北京の街を走るパヴァロッティなんかの絵は珍しいですね。中国の若い歌手にレッスンする場面もありました。

面白いのが中国のお客のとにかく熱狂的な反応。出てきただけでスタンディングオヴェイション,ちょっと高い声,長い声出したら歌の途中でも構わずスタンディングオヴェイション。「ムゼッタのワルツ」の場面があったんですが,その頂点でももちろん大喝采。見てるとさすがにちょっとうっとうしくなります。まあ,それはともかくパヴァロッティは楽しそうなんで良かったんじゃないでしょうか。(2000.6.10)



サイトウ・キネン・オーケストラ/エディプス王(60分)
(BS2でだいぶ前に放送されたもの)

1992年松本。出演:白石加代子(語り)ラングリッジ(エディプス)ノーマン(ヨカスタ)ターフェル(クレオン)多田羅迪夫(使者)他。小澤指揮サイトウキネンオーケストラ,東京オペラシンガーズ,晋友会合唱団。ジュリー・テイモア演出,ワダ・エミ衣裳。

単なるライヴじゃなくてちゃんとフィルムで映像作品として撮ってます。大フィルの定期の予習のために見たんですが,つまらんですねえ。歌手は一流どころを揃えてるし,演奏は悪くないんですが,演出が気に入らん。一言で言うと悪趣味。

まず白石加代子の語り。うぎゃー恥ずかしいー。黒澤の『羅生門』の巫女みたいな格好で,なに気張ってるの? 芝居臭ーい。臭っ! なんか,国際的に通用する映像作品作ってやるぞ,みたいなしょうもない意識がありありと感じられますね。小林正樹の『怪談』みたいな恥ずかしさ。

衣裳。主要登場人物は頭の上にモディリアニの絵みたいな仮面。ぼろい着物に長い指。コロスは泥人形みたいな格好。演出。エディプスの心理を表現するダンサーが登場して踊るんですが,なんと歌舞伎の動きなんかも取り入れてる(笑)。最後は,お手軽に意味ありげな「水」の登場。ゲージュツ臭ーい。

金かけりゃいいってもんじゃないっていう見本ですね。
(2000.5.26)



「マルサリス&小澤・オン・ミュージック(60分×?)」
(BS2でだいぶ前に放送されたもの)

原題は 'Marsalis on Music' なんですけどね(^^;)。小澤は指揮するだけで全然しゃべってないし。ウィントン・マルサリスがタングルウッドの納屋を改造したホールで音楽のいろいろな要素について子供向けに話すという番組。小澤はタングルウッド・ミュージックセンター・オーケストラという学生オケを振り,マルサリスは自分のバンドを連れてきてます。数回シリーズだったはずですが,リズムについての第一回と,形式についての第二回(たぶん)を見ました。というのも,この二回分が残っていたからで。

第一回は「くるみ割り人形」組曲を,原曲とエリントン編曲版を対照させながらという趣向。小澤の指揮するオケは,個々にはうまい人もいるけど,やはり悲しいかな弦など音が薄くてマルサリスのバンドの敵じゃないですね。CGでアニメみたいなのを出してましたが中途半端。エリントン版を聴くのははじめてだったんですが,うーん,まともすぎて拍子抜け。もっとめちゃくちゃに原曲を壊してくれる方が好みです。

マルサリスの説明,結構高度なことも話してて,子供に全部解ったかどうかは怪しいです。まあ全部わかる必要はないけど,もっとわかりやすい説明の仕方あるような気が。第二回はより一層子供ほったらかし。ソナタ形式の説明するのに,なんでまた「古典交響曲」を・・・。あれは第1主題が主題らしくなくて難しいからアイネクライネナハトムジークぐらいにしとけばいいのに。マルサリスに限ったことじゃないけど,こういう子供向けの啓蒙的音楽番組,なかなかいいのがないですね。いやもちろん,我々が見れば面白いんですけど。

テーマ曲は好きです。
(2000.5.26)



「戦いの日々〜孤高の作曲家シェーンベルク(80分)」
(BS2でだいぶ前に放送されたもの)

シェーンベルクの生涯を描いた Larry Weinstein によるドキュメンタリー映画なんですが,作りが凝っています。シェーンベルク自身の語りを軸に,シェーンベルクの弟子や友人たちの証言で進行していくという,普通のドキュメンタリーの構成なんですが,この弟子や友人たちが,本人ではなく(当然ですが)そっくりの俳優が,いかにもそれらしいシチュエーションでそっくりに演じているのです。ベルク,ヴェーベルンはもちろん,アイスラー,ヴェレシュ,アルマ・マーラー,ココシュカ,ツェムリンスキー,E.シュタインらが,書斎であったり,劇場であったりで,いかにも本物のドキュメンタリーみたいにインタビューに答えてます。カンディンスキーなんかわざわざロシア語訛りのドイツ語でしゃべるという芸の細かさ。

それから,間でいかにも当時撮影されたようなフィルム(シェーンベルクが娘をモデルに絵を描いているところとか)が挿入されるんですが,これももちろん本物じゃない。証言の内容は彼らの実際に言ったことから取られてるようですが,こういう遊び心は面白いです。

これは最後まで見ないとわからないんですが,時期もかなり細かく設定されているようで,全員,第1次大戦後,シェーンベルクが12音技法を確立した直後ということでしゃべっています。十二音技法の将来について非常に楽観的に語られているというのが面白いです。第2次大戦のことも当然出てきません。また,すでに亡くなっていたマーラーも出ていません。

演奏者も一流,ブーレーズ指揮のアンサンブル・アンテルコンタンポラン(室内交響曲第1番),シェーンベルクSQとアーリーン・オジェー(弦楽四重奏曲第2番),シュテファン・ヴラダー(ピアノ曲いろいろ),マイケル・ティルソン・トマスとオリヴァー・ナッセン指揮のロンドン響(グレの歌,管弦楽曲 Op.16,期待)など。

なお,私が見たのはBSで放送されたものですが,字幕に明らかな誤訳が何ヶ所かありました。例えば室内交響曲のくだりでシェーンベルクが「この曲に感動する人はそうはいないでしょう。」と言ったことになってますが,実際は「この曲を作曲していたときの私ほどこの曲感動していた人はいないでしょう。」みたいなこと(正確には覚えていない)でした。

内容的には,シェーンベルク夫人が画家のゲルステルと駆け落ちした事件に多くが割かれていたりして,シェーンベルクの理論にさほど深く切り込んでいるとは言えないんですが,この種のドキュメンタリーとしてはなかなかの出来ではないでしょうか。
(2000.5.26)



オッフェンバック:美しきエレーヌ
ヘレナ・・・アンナ・モッフォ
パリス・・・ルネ・コロ
メネラウス・・・ヨーゼフ・マインラート
カルカス・・・イヴァン・レブロフ
アキレス・・・ハラルト・セラフィン
アガメムノン・・・ハンス・クレーマー
シュトゥットガルト南ドイツ放送合唱団
シュトゥットガルト放送管弦楽団
指揮・・・フランツ・アラーズ
振付・・・ローター・ヘーフゲン
演出・・・アクセル・フォン・アンベッサー
(BS2でだいぶ前に放送されたもの)

オッフェンバックのオペレッタを映画にしたもの。ちょっと古臭い色調がノスタルジック。装置や演出はいかにもエンターテイメントのお芝居という感じの保守的なもの。最初に演出家が自ら登場して物語の背景について5分ぐらい説明します。

このオペレッタ見るのはじめてだったんで,まずは作品の感想。イリアスをパロディにした台本は面白いです。ギリシャ神話の世界を徹底的に卑俗にしてるのが痛快。ただし音楽はちょっと現代の我々にはシンプルすぎて退屈。なんだか『エフゲーニ・オネーギン』のムシュー・トリケのクプレみたいなのが延々続く感じ。オッフェンバックはほんとに『ホフマン物語』以外いいと思ったことないです。J.シュトラウスは好きなんですけどね。ファンの皆さんごめんなさい。

歌手では若々しいルネ・コロがいいです。モッフォは,ヴィジュアルこそ胸のざっくり開いた衣裳でフェロモン撒き散らしてますが(といっても結構トウは立ってるか),歌の方はちょっと全盛期過ぎた感じ。カルカスのレブロフはなかなかいいキャラクターの名演技。他の歌手はオペレッタのスペシャリストみたいな人が多いようで,達者な演技と手堅い歌です。

面白かったけどまあ一回見れば十分かな。セリフが多いのでドイツ語の勉強にはいいかも。(2000.5.26)

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